水墨画で使いやすい和紙には、画仙紙・麻紙・玉版箋・唐紙・紙郷紙などがあります。


・画仙紙

本画仙・大画仙・中画仙・小画仙・越前画仙・因州紙など
繊維がしなやかで長く、墨の濃淡がよく表現できます。
墨のにじみ方は中国の宣紙に比べててかたい感じですが、敏感に墨に反応し、爽やかな撥墨をします。
紙が薄いため筆足がつきやすく、水に濡れると破れやすいです。
二層紙は単宣より扱いやすく、撥墨の効果がよいです。
二層、三層と厚くなるほどにじみが鈍くなります。


・麻紙

白麻紙、黄麻紙があり、1枚漉きの麻紙・中厚麻紙・厚手麻紙があります。
適当な浸潤性があり、墨色も美しく、墨ののり具合もよいです。
単宣などの鮮烈なニジミはないですが、控えめなにじみの変化が何とも美しい紙です。
画仙紙と異なる点としては、墨の描き重ねができ、筆足があまりつかない点です。
雲肌麻紙は、厚手の紙で張りのある感じで、重ね描きができ、筆足もあまり気になりません。
墨を吸うため濃淡の変化が描いたときと乾いたときと違うことが多いです。


・玉版箋

撥墨がよく、墨色の変化が美しい紙です。


・紙郷紙

墨色が美しく、微妙なニュアンスの墨色のにじみが表現できます。
墨ののり具合もよく、淡墨も澄んでキレイですが、作品がしまった感じになりやすいです。
他方、やわらかく潤んだ幽玄な表現には適しません。


・唐紙

白唐紙と黄唐紙があります。
紙肌が粗く、厚めのものを一番唐紙、薄めで黄淡色で肌の細やかなものを二番唐紙といいます。
比較的撥墨もよく画仙紙ほどのにじみはないので、練習用に適しています。


・鳥の子紙

卵黄色の厚手の和紙です。表面が滑らかで光沢があり、ふすまや屏風に使われます。
鳥の子紙は、「本とり」と「新とり」があり、本とりは手漉きで、新とりは機械漉きです。
紙質がなめらかで固く、墨があまりにじまないのでやわらかいにじみや濃淡の表現が難しいです。


・機械漉きと手漉き

手触りのやわらかい手漉きは墨色が美しく表現できます。


・紙を使うタイミング

漉いてから4~5年経ったものがよりよいです。

漉きたての紙は肌に潤いが乏しく、墨色が冴えません。


・湿度と紙の相性について

紙は乾燥や湿気に敏感です。
湿気の多い日は撥墨が悪く、墨の光彩が生まれません。墨ののりもイマイチです。
乾燥していると微妙な撥墨が期待できません。


・紙の試し描きには

和紙の墨色を試す場合は淡墨で描いてみるのがよいです。

静かにやわらかくにじむもの、むらになってにじむもの、にじみが荒れた感じででるものなど。
紙質により針状のにじみがでるものが描きにくいです。
紙質の固いものは墨色が固く、撥墨もよくないです。


・紙の保管

湿気の無い通気性のよい場所に保管し、紙が折れたり、シワになったりしないように保管することが大切です。
直射日光は避けてください。